「 空が泣き、鳥が静み、森の葉々が輝き、大地が微笑む 」
大きな作品です。絵の大きさには意味があります。
長編小説と短編小説と同じです。
作家の意図によって、必要とする原稿枚数が違ってきます。
絵も、描こうとする世界の内容から、自然にその大きさが決まります。
3色のバージョンがあります。舟は、みかさんがよく描く対象です。
舟の中には、炭化したような木々があり、鳥が舞っています。
鳥も爽やかな感じのものではありません。
舟の周りには、水滴が垂れています。空が泣いた涙、ということは雨粒です。
雨、涙の水の中に浮かんでいる舟です。
シンプルな構成ですが、色々な思いを感じさせられます。
みかさんの作品のタイトルとしては一番長いものでしょう。
少し変わった言葉遣いです。
タイトルから考えると動きのない、死のような世界から、
再生の希望を託しているようにも思えます。
タイトルも、作品を理解する上で重要です。
全て作品と関連があるとは言えませんが
作者の思いを想像できる唯一の手がかりです。
舟は常に留まらずに水とともに流れゆく、人生の象徴でしょうか。
方丈記のように。
「 ゆく川のながれはたえずして、しかももとの水にあらず 」
舟の中の絵は、佐々木マキを思わせますね。
「 波 の 戯 れ 」
これも大きなものです。絵も対象も。堂々たる作品です。
フレームも海、貝殻をイメージした立派なものです。
鯨の中に見える船は、ギリシャ、コリントと言った言葉を想起させます。
尾の中には、マグロのような大きな魚の顔が見えます。
絵だけでなく、適切なフレームと組み合わせることによって、作品は完成します。
どの世界も、自分一人だけでは生きられません。
絵が100%だと思っていると大間違いです。
シテとワキ
勝手に主従のように思い込んでいても、実際にはそんな関係ではないのです。
触媒という言葉があります。化学用語ですが、人間社会にも通じます。
色即是空のように、世の中は関連の世界として在るということでしょうか。
「 マグノリア ロマンス 」
恐竜をモチーフとして描いた作品は沢山あります。中でも一番のお気に入りです。
一目見て、すぐ手に入れました。大きな作品です。
magnolia はモクレン、泰山木、の仲間と辞書にはあります。
ここでは、ちぎられた色紙が、葉、花びらのように表現されています。
マグノリアは春、初夏の花木です。でも、恐竜 T-rex のまわりを流れているのは
落ち葉のように見え、なんとなく秋を思ってしまいます。
後ろを振り返って不安気に見つめる目は、
恐竜の滅亡の時代に至る予感を感じさせる、と言ったら言い過ぎでしょうか。
ディズニー映画の「ファンタジア」では、ストラヴィンスキーの「春の祭典」
を背景音楽として、恐竜時代を描いています。中でも、ブロントザウルスが
長い首を持ち上げて、後ろを不審気に眺める姿が印象に残っています。
同じような雰囲気を感じてしまいます。
T-rex は暴君龍と呼ばれていますが、この絵からは儚さが感じられます。
暴力によって自らの弱さを隠すことはできません。
家の中では威張っている父親が、自分の内実の弱さを隠せないように。
みかさんの表現する、動物の目は独特です。この恐竜に限りませんが。
見ていると目の中に引き込まれそうです。
「 詩 節 」
3頭の親子のロバが歩いています。
対称的で、上下の世界に分かれたクルミの中です。
上下の世界は違います。
夏と冬、陽光と夕暮れ、あるいは表と裏の世界。夢と現かもしれません。
上の世界では、木々の葉も茂っていて、鳥も楽しげに飛んでいます。
下の世界では木は枯れ果て、地面もでこぼことして、霜柱のように見えます。
鳥の姿も見えません。
ロバもよく見ると、同じではありません。
3頭目の子ロバは、
下の絵では、逆らっているように、いなないています。
自分だけは周りとは一緒にならないぞと言っているのでしょうか。
スペインのロバの話というと、フアン・ラモーン・ヒメネスの
「プラテーロと私」を思い出します。
優しくて、ゆったりした話だったと記憶しています。
ロバの親は父親でしょうか、それとも母親でしょうか。
私はロバの雌雄を弁じませんが、
自分が父親であることから推し量ると、どうも母親のように思います。
子供を引き連れて歩くのは、やはり母親でしょう。
そうでなくては、子供達も安心できません。
3頭とも目を閉じて、穏やかな表情です。
「 詩 人 」
羊の頭骨の中の世界、親子のオオカミが歩く荒涼とした自然です。
遠くの山並と、空を飛ぶ鷲のような鳥たち。
一角獣の頭骨を読む、夢読みの世界。
「 世界の終わり と ハードボイルド ワンダーランド 」
「 音 楽 隊 」
ブレーメンの音楽隊。
以前、ピカソの展覧会に行った時、そばにいた妻に、赤塚不二夫だねと言ったら
その後、どれを見ても赤塚不二夫にしか見えなくなったと怒られました。
「 星 」
本当に小さな作品です。
これもブレーメンの音楽隊ですね。
力持ちのウサギの肩にはワニが。星を取ろうとしています。
でも、帽子にみんなを乗せている、みかさんが一番力持ちです。
ワニも好きなモチーフの一つですね。