2022 8/15

 

  

      敗 戦

      

         その年も、暑い夏だったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

                「 夏 」

 

 

    みかさんの描く女性は、面長で目を閉じているものが多いです。

   考える女(人)、のような姿勢です。ロダンよりも難しい腕の形です。

                きれいな緑色が目につきます。あまりない色ですね。

 

            水玉模様が周りを舞い、髪にも。

 

      テーブルのグラスは、ロングドリンクですね。

          麦茶でも構いませんが。

 

 

 

 

 

 

 

                「 空 」

 

 

 

 

                「 世 界 」

 

 

   対の作品です。空の形と、下の女性の腕の組み方、顔の向きが違います。

    それぞれ、うまく対応されています。

        「空」には雨粒のようなエンボスが見えます。

 

    敬虔な思いが感じられ、シンプルな絵柄ですが、深い感動が得られます。

     祈りを捧げる、本来の宗教的という意味が自然に表出しています。

 

 

 

 

 

 

 

                                         「 あの夏の記憶 」

 

 

   グラスの中に、海辺にいる女性が。顔立ちはいつもの女性とは違います。

           空にはカモメが舞っています。

 

           グラスの柄の中に、女性の腕が混然として溶け込み

                    ヒトデなど、海底の景色と一体となっています。

        グラスの底からシャンパンの泡が立ち上っています。

 

       海底の光景がみかさんらしく、独特な美しさがあります。

 

     みかさんの作品には、記憶、思い出を感じさせるものが多いですね。

 

         昭和20年の夏の記憶とは違います。

 

 

 

 

 

 

              「みかさんの鳥たち」

 

 

               「 航 海 す る 」

 

 

         みかさんは作品の中で、鳥を沢山描きます。

         ここの鳥たちはよく描かれる形のものです。

   と言っても、動きのある、動的な鳥たちと、静的なものがあります。

 

     ここの二つ「航海する」と「忘却へ」は、対の作品ですが、

   並べて掛けることによって、更にその動きが広がって見えることがわかります。

 

    どちらもエンボスで、絵の中に小人が舟を漕ぐ姿が描かれています。

       エルフのようです。

 

 

 

                「 忘 却 へ 」

 

 

    ジェット戦闘機のような、力強さを感じます。動的な表現の代表です。

 

 

    絵の中には、二つの作品とも、舟を漕ぐ小人がエンボスされています。

 

           鳥の中にはいつも通り、別な絵柄が描かれています。

       植物でしょうが、なんだか箒のような形態のものも。

 

    航海、と忘却というタイトルは他の作品でも使われています。

     みかさんにとってある思いをよぶ言葉なのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

            「 セカンド メッセージ 」

 

 

   鳥の中には植物の葉の絵柄が見えますが、これは上掲の「航海する」「忘却へ」

      と違い、動きのない、静的な鳥です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             「 忘却の間を航海する 」

 

 

 

 バオバブのような木が見られる中に、大きな川が流れ、大きな魚の姿も見えます。

   ラクダも歩き、エジプト、ユーフラテス、のようなイメージが湧いてきます。

 

     「忘却の間を航海する」というタイトルは、みかさんの鳥たち の

   「航海する」、「忘却へ」、というタイトルと関連しているのでしょうか。

     「航海する」、「忘却へ」の二つの作品は、対のもので、

       並べて掛けるようになっています。

  ですから、みかさんの中では、「忘却の間を航海する」、というタイトルの作品と

      同じ意味合いを持っていることが感じられますし、

        この言葉にはある思いが込められているように見えます。

 

       航海は、舟のイメージ、人生とまさに重なるものです。

        忘却も、人生の流れの一部を形作っているものです。

         なくてはならないものとも言えます。 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

              「 海の精たち 」

 

 

     真ん中の女性の左右にも、うっすらと二人の女性の姿が見えます。

      腕の組み方は、「空」、「世界」の女性を思わせます。

 

           青い深い海の中の、海の精たち。

 

       マットの色も上手く組み合わされています。

 

 

 

 

 

 

 

 

            「 セ ミ (  蝉  )」

 

 

           蝉が止まった木の前に立つ女性。

 

     最初、男性かと思っていましたが、お下げ髪が右肩に見えます。

       前髪も女性のものですし、上着の襟元もそうですね。

 

         私の勘違いでした。夏の帽子を被っています。

 

       目を閉じていますが、祈っているわけではなさそうです。

          何も考えていない。無心の境地です。

           木の幹の質感もいい感じです。

 

   セミから思い出すのは、マルセル パニョルの「少年時代」を原作とする

    イヴ・ロベール監督の映画 「マルセルの夏」「マルセルのお城」です。

          映画、小説ともにいいものです。

 

       木に止まっている蝉は、鳴いているのでしょうか。